間違った髭剃りはニキビのもと⁉よくある勘違いと対処方法を解説
男性が第二次性徴に差し掛かると、男性ホルモンであるテストステロンの分泌が増加し、体にさまざまな変化が起こります。髭が生えるのもそのひとつで、個人差がありますが中高校生になる頃から生え始めるのが一般的です。
うっすらと髭が生え始める頃から周囲の目が気になり、お手入れをスタートする人が多いのではないでしょうか。しかし、髭剃りの方法によっては肌トラブルが起こりやすくなることがあるので注意が必要です。
この記事では、ニキビを引き起こす可能性がある間違った髭剃りの仕方やニキビができたときの対処方法のほか、ニキビや肌荒れを防ぐカミソリのお手入れの仕方について皮膚科医が解説します。
ニキビができる原因は?
ニキビができる主な原因は、皮脂の過剰分泌や毛穴の詰まり、ニキビの原因菌であるアクネ菌の増殖です。
本来、トラブルのない肌では肌の奥で新しい細胞が生まれ、古くなった細胞は肌表面に押し上げられてはがれ落ち、生まれ変わるという「ターンオーバー」が行われています。
しかし、紫外線などの外的刺激や不規則な生活、ストレスなどによってターンオーバーの乱れが起こると、角質が厚くなって毛穴がふさがれ、皮脂の詰まりが起こります。この皮脂をエサにして皮脂内で増殖するアクネ菌が炎症を起こすことによって、毛穴が赤く腫れるのがニキビです。
初めて髭剃りをする10代中頃くらいの年代は、ホルモンバランスの乱れが皮脂の過剰分泌につながり、毛穴が詰まってニキビができることも多いでしょう。
また、間違った方法で髭剃りをしたり、カミソリを間違った方法で使用したりすることで、ニキビに似た「尋常性毛瘡(じんじょうせいもうそう)」と呼ばれる発疹ができる人も少なくありません。尋常性毛瘡は「カミソリ負け」と呼ばれるものの一種で、髭剃りの際にできた小さな傷に細菌が侵入することによって起こります。悪化すると治るまでに時間がかかったり、カミソリでの髭剃りを中止して医療機関を受診したりしなければなりません。
■ニキビができる原因
意外と知らない?髭剃りをするときに注意すべきこと
髭剃りによるニキビや尋常性毛瘡の発生を防ぐには、正しい髭剃りの方法を知ることが大切です。下記のチェックポイントを参考に、普段の髭剃りの方法を見直してみましょう。
<1つでもあてはまったら要注意!髭剃りのチェックポイント>
- 髭剃りの前に顔を洗っていない
- 肌が乾燥したまま髭剃りをしている
- 水や洗顔料で髭剃りをしている
- カミソリの刃を強く肌に押しあてて髭剃りをしている
- 最初から下から上に、髭の生えている方向とは逆に髭剃りをしている(逆剃りをしている)
- 髭剃り後のカミソリをお風呂場に保管したり、そのまま放置したりしている
- 髭剃り後は肌のケアをしないで、ほったらかしにしている
なお、ニキビや尋常性毛瘡の発生を防ぐため、髭剃りに関して注意すべきことには、主に下記の3つがあります。
- 摩擦による肌への影響
- カミソリの刃に付着した細菌
カミソリを使用した後は、水やお湯で良くすすいで汚れを取り除き、水気を軽く切ったら、タオル等で拭かず自然乾燥させて、湿気の少ない所で保管するようにしましょう。
- 髭剃り時のケア
髭剃り後の肌は、古い角質が除去され、通常より乾燥しやすくなっています。乾燥した肌は水分を補おうとして脂分を過剰に分泌し、ニキビができやすい状態につながるため、髭剃りの後は十分に肌の保湿をすることが大切です。
また、髭剃りをする際には、シェービング剤を使って、刃滑りを滑らかにして肌を守ることも大切になります。
髭剃りによるニキビや肌トラブルを防ぐ髭剃り&肌ケア5ステップ
カミソリで髭剃りをすることで、古い角質を除去して毛穴の詰まりを防ぎ、ニキビを発生しにくくすることも期待できます。また、正しい方法で肌のお手入れを行えば、髭剃りによる肌トラブルを防ぐことが可能です。正しい髭剃りと肌ケアの方法を5ステップでご紹介します。
STEP1:髭剃りの前に顔を洗う
外出していなくても、顔にはほこりや皮脂などの汚れがついています。汚れた顔のまま髭剃りをすると、カミソリの刃に雑菌がついて顔に広げてしまったり、カミソリが肌に引っ掛かって傷になったりすることもあります。まずは丁寧な洗顔で顔についた汚れを落とし、肌を清潔な状態にすることが大切です。
STEP2:ぬるま湯や蒸しタオルで髭をやわらかくする
髭は、何もしていないときは硬く、カミソリの刃に引っ掛かりやすい状態のため、ぬるま湯や蒸しタオルで、髭に水分を含ませてやわらかくします。ぬるま湯や蒸しタオルで肌を温めると毛穴が開き、毛穴に詰まった汚れも落としやすくなります。
なお、お風呂上がりは髭が濡れてやわらかくなっているため、髭剃りをするのにおすすめのタイミングです。
STEP3:シェービング剤を塗る
髭剃りを始める前には、1本1本の髭がシェービング剤で包まれるように顔全体に塗り広げます。シェービング剤を使うことで、カミソリの刃が肌に直接あたるのを防いで肌への負担を軽減するほか、刃滑りを滑らかにして、肌への負担を減らしながら剃ることができます。
透明のシェービングジェルであれば、毛やニキビなどの肌荒れを確認しながら髭剃りできるので、初めて髭剃りをする人にも安心です。
なお、シェービングジェルには、アロエエキスなどの保湿効果が期待できる保湿成分を含むものや、アルコールフリー、パラベン(防腐剤)フリー、着色料フリーや、ニキビのもとになりにくい処方など、さまざまな種類があります。10代前半~20代後半は、特に肌が不安定になりやすいので、なるべく肌に優しいものを選ぶことが大切です。
STEP4:髭の流れに逆らわず、優しく髭剃りをする
カミソリで髭剃りをする際は、髭の流れに逆らって剃る逆剃りは肌への負担が大きくなるため、髭の流れに沿って上から下に剃る順剃りで、肌への負担を軽減しながら刃を優しく滑らせることがポイントです。下から上に剃る逆剃りは深剃りできる分、肌に負担がかかるため、まずは順剃りから始めるようにしてください。
また、切れ味の悪いカミソリを使うと無意識に刃を肌に押しあて、力を入れてしまうこともあります。その結果、刃を一度滑らせただけではきれいに髭が剃れず、何度も往復して髭剃りをし、肌への負担が増す可能性があります。切れ味の良いカミソリを使えば、刃は軽くあてて滑らせるだけで十分です。肌に優しく刃をあててゆっくり髭を剃ることが大切になります。
なお、ニキビや肌荒れがある部分にカミソリがあたると、症状を悪化させてしまうことがあります。肌トラブルが起きている部分には、カミソリの刃がニキビや肌荒れにふれないようにして、丁寧に髭剃りをしましょう。
STEP5:髭剃り後は肌のケアをする
髭剃り後は、シェービング剤のすすぎ残しがないよう洗い流して、化粧水、乳液、クリームなどで肌を保湿することが大切です。髭剃り後の肌をそのまま放置すると、乾燥して肌荒れを引き起こしやすくなります。
また、肌が乾燥すると、潤いを補うために皮脂を過剰に分泌し、ニキビの原因になる場合があります。保湿によって肌に潤いを与えることで肌をすこやかに保ち、ニキビや肌荒れを防ぐことができます。髭剃りの後にはいつもより念入りに保湿する意識を持つことが大切です。
正しく髭剃りをしてもニキビができてしまうときの対処方法
正しい方法で髭剃りをしてもニキビができてしまうこともあります。その場合、下記のように髭剃りの仕方を変えるほか、市販薬を使ったり、皮膚科医に相談の上で医薬品を用いたりすれば対処することが可能です。
ニキビや肌荒れを避けて髭剃りをする
正しく髭剃りをしてもニキビができてしまうときの対処方法は、ニキビや肌荒れを避けて髭剃りをすることです。ニキビや肌荒れはカミソリの刃があたると悪化することもあるため、部分的に避けて髭剃りをして、治癒を待ちます。なお、ニキビは皮膚科を受診して処方薬をもらえば、より治りがよくなるでしょう。
透明のシェービングジェルを使うと肌の様子を見ながら髭剃りができるため、うっかり刃を患部にあててしまうリスクを抑えられます。
市販薬や医師と相談の上、処方薬を使う
市販薬や医師と相談の上、処方薬を使うことも、正しく髭剃りをしてもニキビができてしまうときの対処方法のひとつです。比較的小さなニキビであれば、ドラッグストアなどで購入できるニキビ用の皮膚用薬を使用して様子を見てもいいでしょう。
なお、ニキビがなかなか消えない、炎症が悪化して痛みがある、ニキビの数が増えているといった場合は、できるだけ早く医療機関を受診して、医師の指示に従って適切な薬を処方してもらうことをおすすめします。また、保険診療でニキビを治療できる処方薬は多くあるため、ニキビくらいでと遠慮せずに皮膚科を受診して治療を開始するのが完治への近道です。
意外と知らない正しいカミソリの保管方法と替刃の交換目安
肌にやさしいシェービングを行うためにはカミソリの適切な保管や替刃の交換も大切なポイントのひとつです。ここでは、カミソリの保管方法と替刃の交換目安をご紹介します。
使用後のカミソリは丁寧に洗い、お風呂場以外で保管する
髭剃り後のカミソリの刃は、皮脂が付着したり、水に濡れたりして雑菌が増殖しやすくなっています。そのような状態のカミソリを使用すると、髭剃りの際に肌の小さな傷から雑菌が入り込み、肌トラブルにつながる可能性があります。使い終わったカミソリは放置せず、流水で丁寧に汚れを落とすことが大切です。
また、洗い終えたカミソリを湿度の高いお風呂場で保管していると、さびや刃こぼれなどが起き、肌を傷付ける可能性が高まります。カミソリを使用した後は水やお湯で良くすすいで汚れを取り除き、水気を軽く切ったら、タオル等で拭かず自然乾燥させて、湿気の少ない所で保管するようにしましょう。
適切な頻度で刃を交換する
お手入れをしていてもカミソリは劣化し、次第に切れ味が落ちて肌に傷をつけやすくなるため、カミソリの刃は毎日剃る場合は、2週間に1回程度を目安に交換することが必要です。
また、カミソリの刃の交換目安は、髭剃りの頻度や毛の硬さにもよるので、切れ味の低下を感じたら適切に刃を交換することが大切になります。
■カミソリの刃の拡大図
左)新しい刃 右)使用回数を超過して刃こぼれをした刃
正しい髭剃りを習慣化し、ニキビのできにくい肌を目指そう
初めて髭剃りをする人が多い10代中頃くらいの年代は、ホルモンバランスの変化もあってニキビができやすい時期です。古い角質の除去につながる正しい髭剃りの方法を習慣化し、ニキビの原因となる毛穴の詰まりを防ぐことをおすすめします。
ニキビができてしまった後は、透明のシェービングジェルなどを使い、肌の様子を見ながら髭剃りを行うことが大切です。正しい髭剃りの方法で、健康的な肌状態を維持しましょう。
教えてくれたのはこの先生!
上嶋祐太先生 新宿駅前うわじま皮膚科 院長。浜松医科大学卒。日本皮膚科学会専門医・指導医、認定産業医。東京大学医学部附属病院、東京警察病院、東京逓信病院の皮膚科にて研鑽を積み、形成外科のキャリアも併せ持つ。赤ら顔・血管腫治療のブイビームレーザーや、ホクロ除去、粉瘤くり抜き法手術で数万例に及ぶ豊富な経験を持つ。保険診療、美容医療、スキンケアから個々に合った最適なカスタマイズ治療を得意とする。 |
この記事を読んだ方に
おすすめの商品はこちら